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コンサルファームトップ対談 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ COO 白川 克氏 ~社員が「個人商店」にならないコンサルティングファームにするための仕掛けづくり~

コンサルファームトップ対談 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ COO 白川 克氏 ~社員が「個人商店」にならないコンサルティングファームにするための仕掛けづくり~

『コンサルファームトップ対談』シリーズの第2弾となる今回は、前回同様、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(以下、ケンブリッジ)から、COOの白川 克様となります。当メディア運営会社のコダワリ・ビジネス・コンサルティング(以下、コダワリ)の代表である大谷内が、「コンサルティングの最前線」で見る業界のあれこれについてオンラインでお伺いしました。

▼同社代表の榊巻氏対談はこちら▼

1.オープンなカルチャーが「選択の機会」をもたらす

大谷内:
先日、貴社代表の榊巻さんとお話しし、会社の規模や成長に関する話題などでケンブリッジさんと弊社の共通点が多く、大変盛り上がりました。コンサルティング部門のトップである白川さんともお話しできるのを楽しみにしていました。

白川様(以下敬称略):
コンサルティング業界において、価値観の近い会社や経営者にはそう出会えないので純粋に嬉しく思います。

大谷内:
榊巻さんとの対談では、会社の規模や成長だけでなく、社員の質や期待値など、多くの点で共通する想いがあることが分かりました。

白川:
まさしく、弊社は質を大事にしており、そのために社員のスキル・経験を大事にしております。特に弊社は人材の育成力が強く、価値観のあった方にジョインしてもらい、現場やさまざまな社内研修を通して、きちんと育てていくのが得意な会社であると自負しています。

大谷内:
白川さんのブログを拝読して「キャリアは自己責任」という表現が印象的でした。どういった意味を込めていらっしゃるのですか?

白川:
「キャリアは自己責任」というのは、端的に言うと、社員は自身のキャリアを「自分事」として懸命に考え選択するべきであり、会社は社員の考えや選択に対して徹底的に支援していくべきということです。

大谷内:
社員が自律的に思考するために、会社が社員の「選択の機会」を重んじているということですね。例えば、社員研修だとどのような「選択の機会」があるのでしょうか?

白川:
例えば、研修を受ける順番などは社員の判断に任せています。個々人が「自分に何が足りないのか」を自分事として考えて研修を選んだり、研修を行える社員に講師を打診して受講したりすることもできます。また、研修を受けるよりも研修を実施する方が圧倒的に身になるものが多いので、「経験したことはどんなことでも勉強会にしてアウトプットしよう。必ず誰かの役に立つから。」としています。

大谷内:
なるほど、そうなんですね。プロジェクトの観点ではどのような「選択の機会」がありますか?

白川:
社員には「仕事内容やクライアントに関して希望を全部言ってほしい」と毎週実施している1on1などを通じて伝えています。みんな最初は「どんな仕事でも経験になるので何でもやります」と言うのですが、じっくり対話を続けると「構想策定がやりたい」「もっとお客さんの現業に近い立ち位置を経験したい」といった要望が出てくるようになります。

大谷内:
ケンブリッジの社員さんは成長意欲が高いですね。

白川:
意外かもしれませんが「圧倒的成長を求める」とか「同期よりも早くプロモーションしてやろう」みたいな社員は少なく、純粋に知的好奇心が強い者や、ひたすら自己研鑽を行っている者が多いかもしれません。
ケンブリッジの良いところは自己開示を良しとするオープンなカルチャーだと思っています。例えば、社員が自身の過去の行動を他のチームメンバーと一緒に内省して自分に合った研修やプロジェクトを選んだり、自ら企画した勉強会で自身の振り返りを赤裸々に開示し周りや先輩がそれに対してアドバイスしたりします。こうしたオープンなカルチャーだからこそ「選択の機会」がうまく回っているんだと思います。

2.強いコンセンサスを追求するのがコンサルタントの仕事

大谷内:
ケンブリッジさんはファシリテーション型コンサルティングを強みとしていますが、なかなかファシリテーションが上手くできず苦労している若手社員にはどのようにアドバイスされていらっしゃいますか?

白川:
ファシリテーション型というとお客さんに「これはどうですか?」とお伺いを立てて、綺麗に話をまとめていくことを想像されてしまいます。ケンブリッジのファシリテーションはまったく異なり、クライアント自身が「自分事」として自社の変革と向き合っていくことをゴールとしています。

そのため、若手社員には「自らのオピニオンを持つように」と常に言っています。クライアントはAだと言っているけれど、コンサルタントとして「クライアントが変革と向き合うためにどうするべきか」を考え抜いた結果「Bであるべき」に行き着いたのなら、それをきちんとオピニオンとして表明すべき、ということです。

大谷内:
クライアントに渋い反応をされてしまうこともあるのではないでしょうか?

白川:
鋭い問いかけとして受け入れられることもあれば、クライアントにとって嫌な問いかけとなることもあります。しかしクライアントにとって嫌な問いかけであっても、そこに向き合っていただかないと企業課題の本質的な解決にならないことも多いのです。”なあなあ”な解に進むことを『脆弱なコンセンサス』と呼んでいますが、ケンブリッジのファシリテーションは『強いコンセンサス』をひたすら追求します。『強いコンセンサス』は、鋭い問いかけや嫌な問いかけを仕掛け、自社変革の本質と深く向き合うディスカッションをすることで導き出されるものなのです。

大谷内:
白川さんがクライアントに対して的を射過ぎた問いかけをして、クライアントが困ったことなどはないのでしょうか?

白川:
場が凍ったりすることはありますが、怒られたことはそうないですね。「白川さん、怖い」と言われることはたまにあります(笑)。ただ、言うべきことを言わないコンサルタントに価値はなく、それはただの作業者です。クライアントのことを考え抜いて行き着いたオピニオンはやはり伝えるべきと考えています。

大谷内:
若手社員へのアドバイスの話を伺いましたが、ディレクターの育成という観点で特に意識されていることはありますか?

白川:
特段意識していることはありません。コンサルティングファームのディレクターというのは、結局のところ「一番優秀なコンサルタント」であると考えています。コンサルタントとして経験を積んで一流になっていくことで、ディレクターとなり会社の幹部となっていくものだ、ということです。コンサルティングファームによってはディレクターになると営業して案件を取ってくることが求められるところもありますが、ケンブリッジの場合はマーケティングチームと営業チームがリードを作り案件を獲得しています。私含めてケンブリッジのディレクターは、「営業をどうしていくか」より「どれだけコンサルタントとして一流であり続けるか」を重要視しており、ディレクターに関してコンサルタントと異なる考え方をしているわけではありません。

あえて言うなら、ディレクター陣には優秀なコンサルタントであり続けることに加えてケンブリッジの経営に積極的に関わってほしいので、4-5年前に「ケンブリッジのマネジメントメンバーになるために」というトレーニングコースを作りました。「ケンブリッジではどのような経営判断をしてきたか」といった過去の事例共有や「新規ビジネスの立ち上げ」などのケーススタディが主な内容です。

執筆者

大谷内 隆輔
大谷内 隆輔コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 代表取締役社長
アクセンチュアにてファーストキャリアをはじめ、以来20年超コンサル畑で事業戦略からITコンサルまで幅広くこなす。大企業の経営課題に対して包括的に俯瞰し、全体的なロードマップと解決に向けた推進に強みを持つ。

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