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モビリティ分野で進むDX|自動車会社フォルクスワーゲンの大胆なDX事例とは

モビリティ分野で進むDX|自動車会社フォルクスワーゲンの大胆なDX事例とは

売上は32兆円。欧州最大規模のフォルクスワーゲンが進めるデジタル化とは?

フォルクスワーゲングループは2021年に、2022~2026年の5年間の投資計画「プランニング ラウンド70」を発表しました。投資計画の一つの柱として「デジタル化」を掲げ、自動運転を含むデジタル化に300億ユーロ(約4,200億円)を投資することを発表しています。2018年頃からフォルクスワーゲンは様々な領域でのデジタル化構想を次々と発表しており、今後もその動きを加速させていくことが伺えます。そこで、フォルクスワーゲンが既存の自動車業界をデジタル化でどのように変えようとしているのか、領域ごとの主要な取り組みを紹介します。

自動車製造工程でどのようなデジタル化を進めているのか?

まず、一つ目は工場をクラウドでつなぎ、工場内をデジタル連携しデータを収集・分析することで、より効果的な機械メンテナンスなどを行う取り組みです。

2019年、フォルクスワーゲンはシーメンスがクラウドに関するパートナーになることを、発表しました。シーメンスは、フォルクスワーゲンの122の工場における様々なメーカーの機械装置を、クラウド上で効果的にネットワーク化するための機能を提供しています。

例えば、製造機械のメンテナンスサイクルを前もって計算し、最適化された予防保全機能をクラウドで、フォルクスワーゲンの全ての工場に展開します。これにより、従来であれば機械トラブルが発生した後で対応していたメンテナンスを、事前に最適なタイミングで実施することが可能となります。併せてネットワークでつながっているサプライヤーや機械メーカーにおいても、データ分析により得たナレッジを活用できることにすることで、フォルクスワーゲンとサプライチェーンの生産環境をより効果的にすることができます。

長期的には、1,500社以上のサプライヤーが持つ30,000以上の生産拠点を含むフォルクスワーゲンのグローバルなサプライチェーンを網羅する計画です。

次の事例は、一つの工場全体をデジタル化した事例です。

2022年1月、フォルクスワーゲンがZwickau(ドイツザクセン州)の工場を電気自動車生産工場に変えることに成功したと発表しました。

 Zwickau 工場は内燃エンジン車から電気自動車にすべての生産を切り替えた世界初の大規模施設です。フォルクスワーゲンは、Zwickau工場を電気自動車生産のためにデジタル化し、柔軟且つ高効率なモデル工場に転換するために約12億ユーロを投じました。その結果としてロボットや無人輸送システムなどの技術の使用(スマートインダストリー4.0)が増え、完全に自律的に部品の組み立てやラインへの運搬が可能になりました。この取り組みにより最先端のロボットの数は 1,200 から 1,625 に増加し、組立ラインの自動化率もほぼ2倍の 28% になり、効率性が大幅に改善されました。これらは肩の上に手を置いての作業や頭上での作業など、人間にとっては単調または肉体的に負荷の高い作業を伴う仕事のみに自動化が適用されているとのことです。

フォルクスワーゲンZwickau工場は電気自動車生産工場に
出所)フォルクスワーゲンプレスリリース

自動車販売においてどのようなデジタル化を進めているのか?

自動車販売において、フォルクスワーゲンは「オンラインでの車両販売」を進めています。

2022年4月、フォルクスワーゲンはドイツにおいて、電気自動車のリース販売をオンラインで行うことを発表しました。

「これは、販売をデジタル化するための重要なステップです。当社は、自由に構成可能な車両の完全なオンラインリースを提供する最初の大手自動車メーカーの1つです」とプレスリリースで述べています。

オンライン販売においては、車両の構成、支払いオプションの決定からデジタル認証、契約の締結まで、全てをオンラインで完結できます。また、PC、タブレット、スマートフォンいずれからも利用が可能ということで、自動車リースがより手軽になったと言えるでしょう。

フォルクスワーゲン電気自動車リース販売をオンライン化
出所)フォルクスワーゲンプレスリリース

ただし、フォルクスワーゲン本体は既存の自動車販売組織であるディーラーとの共存は引き続き重要であると考えているようです。プレスリリースで以下のように述べています。

「ディーラーは今もこれからもお客様にとってフォルクスワーゲンの顔です。個人的で有能なアドバイスを提供することになると、彼らは不可欠です。」

現実問題として、車両をどこで引き渡すのかや、アフターサービスをどこで提供するのかという話になるとディーラーの存在は不可欠であると思います。ただ、店舗を訪問し、営業トークを浴び、疲れ切るというような体験は今後しなくてよくなるのかもしれません。

自動車利用においてはどのようなデジタル化を進めているか?

注目すべき自動車のデジタル化は、2020年度に提供が始まった新たなオンラインサービス 「We Connect (ウィー コネクト)」です。

フォルクスワーゲン自動車利用をオンライン化
出所)フォルクスワーゲンHP

このサービスにより、インフォテイメントサービス(所謂カーナビのこと)が常にオンライン化し、カーナビとして難しかった以下のようなサービスが利用できるようになります。

・車両上のトラブルが発生したときにオペレーターと通話できる「ブレークダウンコール」

・定期点検や警告灯情報を販売店に自動通知、販売店へスムーズな入庫が可能になる「サービススケジューリング」

・ドライバーの運転を分析、燃費、走行時間、走行距離等の走行データをスマホ上にて確認できる「ドライビングデータ」

・GPS機能を活用して駐車した自車位置をスマホ上に表示

・ドアロック、ウィンドウ開閉状況、燃料残から計算した走行可能距離などの車両状態をスマホ上からチェック

・車両の装備内容に応じてシートやライト、エアコン、インフォテイメントシステム(ナビ含む)など、多数のセッティング内容を自動保存し、パーソナルデータとして車両乗り換え時にも引き継ぎが可能な「パーソナルセッティング」

さらに、「We Connect Plus」サービスでは以下の機能が利用出来るようになります。

・ドアやトランクのロック/アンロックをスマホから操作

・オンラインでの交通情報取得が可能となり、取得した情報に基づいたルート案内

・ルート沿いにあるガソリンスタンドの燃料価格や駐車場の満空情報情報も取得可能、アプリで設定した目的地をナビゲーションへ転送することができる「オンライン目的地インポート」

・地図データの更新版をオンラインでダウンロード筆者が個人的に特に注目している機能は、「パーソナルセッティング」です。車両を乗り換えても最適な車両状況を引き継いでくれるということが可能になっています。この引継ぎ範囲が拡大していけば自身に極限までパーソナライズされた車に新車時から乗ることが可能になり、満足感が高まることが予測できます。

アフターサービス領域においてどのようなデジタル化を進めているか?

フォルクスワーゲンは2019年9月に、アフターサービス領域の強化に関する構想を発表しました。

電気自動車はエンジン車と比較し、エンジンがないなどの理由によりメンテナンスコストが下がると言われています。メンテナンスコストが下がる=ディーラーにとってはメンテナンスの売上が下がるということです。将来発生する売上減に備え、デジタル化により収益性を向上させるのがフォルクスワーゲンの狙いです。

具体的にはまず、販売プロセスの一貫したデジタル化と車両のネットワーク化です。たとえば、顧客のスマートフォンや車両のインフォテイメントシステムを通じて、今後のサービスイベントについて事前に顧客に通知します。これには、顧客の希望する工場への入庫予約の提案も含まれます。現在は主に電話で行われている入庫提案や予約の受け継ぎが全てデジタル化することで、作業工数は大幅に削減されることが予測されます。

また、低価格化でのサービス提供により町の整備工場に流れていたメンテナンスが、ディーラーに戻ってくる可能性があります。常に車両状況を監視し、メンテナンスの必要に応じてスマホに通知するということが出来れば顧客に一番にリーチすることが可能になります。また、データを見ながら修理ができるので本当に必要なところに絞った、より高価値のサービス提供も可能となるでしょう。

次の取り組みはサービス作業管理システムの刷新です。現在、最大15の異なるシステムで約80分の管理作業が発生している中、デジタルアフターセールスにおける将来の新システム導入により、管理作業を平均わずか15分に抑えていくことを狙うとのことです。これは、80%以上の大幅な時間短縮となり、その浮いた時間でメンテナンスから見えてきた事を元に顧客へのアドバイスなどを行っていくとのことです。

フォルクスワーゲンのアフターサービス領域におけるデジタル化
出所)フォルクスワーゲンプレスリリース

モビリティサービス領域においてどのようなデジタル化を進めているか?

フォルクスワーゲンは様々なモビリティサービスを提供していますが、その中で最も特徴的な取り組みとして、2022年6月からギリシャのアスティパレア島で提供しているライドシェアリングサービス「ASTYBUS」と車両シェアリングサービス「astyGO」を紹介します。

これらのサービスは、これまで島内で限られた公共交通機関を提供してきた従来のバス路線に取って代わります。バス路線とは異なり、移動サービスは一年中運行され、島のより多くの場所を結びます。

カーシェアリング サービス astyGO を介して、顧客はフォルクスワーゲンの電気自動車、SEAT MÓ の電動スクーター、ドゥカティの電動自転車をレンタルできます。すべての車両は、スマートフォンでastyMOVE アプリを介して予約できます。

フォルクスワーゲンのモビリティサービス領域におけるデジタル化1
フォルクスワーゲンのモビリティサービス領域におけるデジタル化2
フォルクスワーゲンのモビリティサービス領域におけるデジタル化3
出所)フォルクスワーゲンプレスリリース

フォルクスワーゲンがライドシェア・カーシェアサービスを提供し、島内の公共交通機関にとって代わる取り組みです。カーシェアサービスに付随しバイクや自転車もレンタル可能であり、それを一つのアプリで利用できる、ということになっています。つまり、島内で移動をしたい、と考えたときにこのアプリを開けば、目的地までの最適な移動手段を選択することが出来るようになっています。これまでのタクシーアプリ、カーシェアアプリ、自転車レンタルアプリ、全てがバラバラでそれぞれに登録が必要でそれぞれに車両を探して予約する、という状況と比較すると圧倒的な利便性が確保されているわけです。

フォルクスワーゲンのモビリティシェアアプリ
出所)フォルクスワーゲンプレスリリース

今回の取り組みは特定の島内という限定的な取り組みですが、都市においても同様にサービスが全て統合され、フォルクスワーゲンのアプリ一つでどういったモビリティサービスも利用できる、といったことが可能になるかもしれません。その場合、フォルクスワーゲンはいわゆる「プラットフォーマー」としての立場となり、移動サービス全般の管理から更に拡大し、決済の提供・ガソリンスタンド探索サービスの提供・駐車場探索サービスの提供など、周辺領域も含めた囲い込みが出来る可能性があります。なぜなら「一つのプラットフォームであらゆるサービスが提供されている」ことこそがプラットフォームの価値であり優位性だからです。よって、フォルクスワーゲンがモビリティサービスのプラットフォームを皮切りにどんどん存在感を増していく未来も可能性としてはあり得るということですね。

まとめ

今回事例で見たように、フォルクスワーゲンはバリューチェーン全体でデジタル化を強く推進していることが特徴的です。最初に述べたように、今後さらに投資を進めていくとのことなので、より広範囲においてデジタル化の取り組みを進めていくことが予測できます。

このようなヨーロッパ随一の大企業が全社的にDXを進めているという事例は、他業界においても参考になるかと思います。製造のデジタル化・販売のデジタル化・製品のデジタル化・アフター・サービスのデジタル化・・・いずれも、どの業界においても普遍的なテーマとできうるトピックではないでしょうか。自動車のような重厚長大な産業においても、上流から下流まで大胆なトランスフォーメーションが可能であるという事実は、他の産業においても注目すべきことだと考えます。

フォルクスワーゲンは直近の動きも多く、今後の動向にも注目です。

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