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コンサルのDX支援最新動向|構想策定や実行支援にとどまらない新たな取り組みとは?
DX支援における新たな3つのトレンドについて解説します
デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)支援は各コンサルティングファームが特段力を入れている取り組み領域です。そして近年、単なるコンサルティング支援だけでなく事業会社と合弁会社を立ち上げるなど、その取り組みは発展しています。現状どういった取り組みが行われているのでしょうか?
DX領域におけるコンサルティング支援は、DXの構想策定からシステム導入の実行まで多種多様です。コンサルティングファームの支援方式も多様化しており、ただのコンサルティングプロジェクトとして事業会社を支援するだけには留まらず、今回は、そういった新しいDX支援の方式について説明していきます。
具体的には下記の三つのパターンがあります。
① 事業会社と提携し、幅広く・深くDXを推進していく
② 事事業会社と合弁会社を立ち上げ、強力にDXを推進していく
③ 事業会社のDX人材育成を行い、自律的にDX推進できる体制を整える
これらのパターンについてそれぞれ具体的な事例を紹介します。
目次
パターン① 事業会社と提携し、幅広く・深くDXを推進していく
まずはじめに、コンサルファームが事業会社と協業することで価値提供の幅を広げられた事例をご紹介します。
デロイトトーマツコンサルティング:ファイナンス領域で株式会社コンカーと協業
2021年、デロイトトーマツと出張・経費管理クラウドのリーダーである株式会社コンカーは、企業の基幹業務を支えるファイナンス領域のDX推進において協業を開始しました。
特に企業において重要な業務であり、かつデジタル化が求められているのがファイナンス領域です。コンカーは特定領域のソリューションを提供、デロイトトーマツはソリューションを切り口にしたDX構想策定〜実行までのコンサルティングを提供するという形になっています。
具体的には、プレスリリースによるとコンカーは、経費精算・管理クラウドや請求書管理クラウド、出張管理クラウドを提供することで、間接業務の効率化とデジタル化により、従業員ならびに経理部門の業務負荷を軽減するほか、電子帳簿保存法に対応した領収書の電子化、ペーパーレス化を推進すると述べています。
また、デロイトトーマツでは、これらのシステムの導入を起点とした、次世代のファイナンス組織の構築・経営管理領域の高度化に向けた構想策定から実行までEnd to Endでのビジネスを推進していくとのことです。
こちらは、ソリューションとDX支援コンサルティングを組み合わせた形の協業です。「デロイトに任せれば細かいソリューションまで全て揃えてくれる」となることでDX支援を強化しています。
PwCコンサルティング:中国銀行と提携し、地方企業のDXを推進
2022年、PwCコンサルティングは、株式会社中国銀行と地方創生を目的とした連携協定を締結しました。
PwCはこの連携でDXコンサルティングにおける知見や、もともと得意とする多岐にわたる分野の多様な関係者を巻き込んだマネジメント手法も提供していきます。加えて中国銀行の持つ地域の企業・自治体・地元大学といったネットワークを活用し、より地域に根ざした、カスタマイズされた強固なコンサルティングサービスを提供することで、地域が直面する少子高齢化といった様々な課題の解決を目指します。
具体的には、以下について相互の情報およびノウハウを共有・支援しています。
(以下プレスリリースより引用)
PwCコンサルティング:
・企業および自治体などに対するDXおよびSXに関するコンサルティング・ノウハウなどの提供・支援
・先端IT人材の採用・育成支援
・新たなコンサルティングサービスの提供支援
・グローバルネットワークを活用した情報提供
中国銀行:
・中堅・中小企業や本地域共通のニーズ・課題の共有
・融資、リース、エクイティなど金融を中心とした各種ソリューションの提供・地域ネットワークを活用したリレーションの構築支援
PwCコンサルティングと株式会社サイバーエージェント
2021年、PwCコンサルティングは株式会社サイバーエージェントとともに、地方自治体のDX推進を支援する共同研究会 「DX Drive Japan」を設立しました。
PwCコンサルティングは多様なDXコンサルティングの知見を、サイバーエージェントはデジタルサービスの開発やマーケティングの知見を持ち寄ります。そして両者の知見を組み合わせたサービスを提供していくとのことです。
まず、最初の活動として以下の取り組みを行う予定とのことです。
(以下プレスリリースより引用)
- 自治体DX成熟度診断
自治体のデジタル化およびDX推進の取り組み状況を独自の評価指標で成熟度レベルとして可視化。取り組むべき課題を抽出し優先順位づけした上で、解決方針を提示いたします。 - DX推進における解決策の立案
各自治体のデジタル化およびDX推進を担う部門の方々の課題や構想のヒアリングを通し、解決策の立案を行います。 - ソリューション開発・提供
課題解決や構想実現に向けて、最適なソリューションやプロダクトがまだ世の中に無い場合は実証実験も含め、開発・提供を行います。
パターン② 事業会社と合弁会社を立ち上げ、強力にDXを推進していく
続いてのパターンは、事業会社と合弁会社を立ち上げ、その事業会社のDXを支援することで価値提供をする事例です。
アクセンチュアと株式会社資生堂
2021年、アクセンチュアは株式会社資生堂と合弁会社「資生堂インタラクティブビューティー株式会社」を設立しました。合弁会社とすることで、資生堂のDX推進にアクセンチュアが自分ごととして取り組みます。
新会社設立により、資生堂が掲げる中長期経営戦略に基づき、ビューティー領域に特化したデジタル・ITの専門家集団として、スピード感やプロジェクトマネジメント能力で、新しいビューティー体験を実現していくようです。
新会社は、データとテクノロジーを駆使したデジタルマーケティングの強化やオンライン・オフラインの融合を実現します。
例えば、お客さまがオンラインや店頭などで行った肌診断やバーチャルメイクアップ診断履歴をデータベースに蓄積します。この履歴データを分析して、時間や場所を自由に選択できるカウンセリングやレッスンのメニューを提案するなど、拡張現実などの最新のテクノロジーも活用し、お客さま一人ひとりに合わせてパーソナライズされたサービスを、生涯にわたりさまざまなコンタクトポイントで提供することが可能になります。
また、既存システムのクラウド移行を始めとする「クラウドファースト」戦略を推し進めることで、IT機能の拡充と柔軟なシステム基盤を迅速に構築し、資生堂の既存IT投資およびメンテナンスコストの投資効率を高めるとともに、事業スピードとデータによるビジネス判断の迅速化を実現すると述べています。
さらに、アクセンチュアが提供するデジタル・IT分野のトレーニングプログラムを資生堂のニーズに合わせて最適化し、高度なスキルを持つ社員の育成を図ることで、資生堂全体のデジタル・IT能力の向上にも貢献していくとしています。
このように資生堂が考えるデジタルを活用したサービス提供を実現するために作られたのがこの会社です。資生堂のサービスに大きく踏み込むDXのため、資生堂の本気度が伺えます。
アクセンチュアとクボタ
2022年、農業機械大手メーカーのクボタとアクセンチュアは合弁会社、株式会社クボタデータグラウンドの設立を発表しました。
同グループの食料・水・環境分野における地球規模の社会課題の解決をデジタルの面から支援することを目的に、主な事業内容として以下の4つを挙げています。
(以下プレスリリースより引用)
・サステナビリティソリューションの創出:食料・水・環境分野における「データの収集・分析・活用」を進め、各分野のビジネスプロセスを効率的なものへと変革し、サステナブルなソリューションの構築を進める。
・ビジネストランスフォーメーションの推進:デジタル技術を活用してクボタの既存サービスの強化、品質向上や、より安全に働く環境づくりなど、事業の効率化および高度化を推進する。
・デジタル人材の創出: 2024年12月末までに1,000名程度の業務のデジタル変革を推進する業務系DX人財と高い専門性をもつ技術系DX人財の育成を目指す。
・クラウドベースのDXプラットフォーム構築:さらなるグローバルでの事業拡大を見据えた、データ駆動型で柔軟な経営の意思決定の実現にむけて、センサーから収集した収穫・生育情報や外部の気象情報といったクボタ内外のさまざまなデータやノウハウの蓄積・共有を可能にするクラウドベースのDXプラットフォームを「Microsoft Azure」上に構築する。
クボタも資生堂同様にサービスのデジタル化に取り組もうとしています。しかし全社改革となるためハードルも極めて高く、独力でやり切るのは難しいという判断をしたのではないかと思います。
パターン③事業会社のDX人材育成を行い、自律的にDX推進できる体制を整える
続いては、企業のDX人材育成の支援を行う事例です。
KPMGコンサルティング:オーダーメイド型のオンライン研修の提供を開始
2022年、KPMGコンサルティング株式会社は、企業におけるデジタル人材育成の支援を目的に、オーダーメイド型のオンライン研修「デジタル人材育成サービス」の提供を開始しました。
KPMGは、日本企業でのDXが進まない理由の一つは「デジタル人材」の大幅な不足になると考えており、そのためには採用などによって企業の外から必要なデジタル人材を調達するだけでなく、既に企業に在籍している社員のスキルアップを通じて「デジタル人材」を育成していく必要があると考えているようです。
今回立ち上げられたデジタル人材育成サービスには、KPMGがDX関連のコンサルティングを通じて培った知見が生かされており、実務に即したプログラムになっていると主張します。
「主な研修内容」
プレスリリースによると、本研修は企業毎にオーダーメイドで組み立てられるとのことです。また、研修の提供に加えてDXを推進するための組織の立ち上げといった、人材育成に限定しない、DX推進のためのサポートができると強調されています。
研修の内容を見るとデータ分析の研修がメインとなっており、企業としてデータ分析をすることへのニーズがあることが伺えます。
デロイトトーマツコンサルティング:デジタル人材の育成を中心とする総合サービス「デジタル人材育成プラットフォーム」の提供を開始
2022年、デロイトトーマツコンサルティングは、DXを実現させるために、デジタル人材の育成を中心とする総合サービス「デジタル人材育成プラットフォーム」の提供を始めました。
(以下プレスリリースより引用)
本サービスでは、デジタル人材の育成について、デジタル人材要件定義・アセスメント、育成体系・施策の立案といったコンサルティングを通じて、各社に最適なサービスを設計します。デロイトトーマツが実施する「デジタル人材志向性調査」の結果を基にしたアセスメント項目より、個々人の知識・スキルの成熟度を特定した上で、学習プログラムの提供を人材タイプ・レベル別に提供します。
自社内に実践環境を構築することが難しい新ビジネスや専門領域については、デロイトトーマツでの実践経験も可能です。
この研修の特徴は以下2点にあります。
一つ目は、DXに関連するテクノロジー系のスキルだけではなく、ロジカルシンキングやチェンジマネジメントなどビジネススキルの研修も提供されていること。
二つ目はデロイトトーマツグループで実践経験を積めること。
これらを踏まえると、事業会社の「社内DXコンサルタント」を育成していくサービスといえそうです。
DX支援は今後どのように進んでいくのか?
「DX」という言葉が普及した現在、事業会社はコンサルティングファームに大きく以下二つを期待していると考察されます。
一つ目が「より専門性のあるDX支援」、二つ目が「自力でDX推進ができるようになる支援」です。
専門的で自社では手を出せない領域だけをコンサルティングファームに任せ、残りは自社で実行できる体制を作りたい、というニーズは、DX推進の重要性・インパクトやコストを加味すると当然だと思います。よって、ご紹介したパターン三つの支援方式は今後も減ることはなく、増えていくことになると筆者は予想しています。
特に、コンサルティングファームの人材およびノウハウを吸収できるパターン②「他社と協業し、協業先のDXを支援する」には、事業会社にとって魅力的なオプションでしょう。新会社を作るのみならず、出向のような形でコンサルティングファームの力を借りることが増えていくと予想できます。この実態に関しては、思ったより期待値が出ていないという話も耳にしており、より実態を掌握していきたいと思います。
また、パターン②に関しては、コンサルティングファームにとってもメリットは大きいです。
理由は、事業会社の内部に入り込むことによって、課題の収集や人間関係の構築が可能になり、新しい支援案件を獲得できる可能性が高まるからです。また、コンサルタントとしても事業会社内部においてどのように意思決定がされるのか、根回しはどう進めていけばいいのか、など今まで外部からでは見えなかった世界が見えるようになるというメリットがあります。
このように両者にとってメリットが大きいパターン②が今後のDX支援の一つのトレンドになることが想像できます。
DX推進の支援は昨今のトレンドであり、すぐにニーズがなくなるような領域ではありません。今後もコンサルティングファーム各社の注力する領域であり続けるでしょう。
本記事では、新しい支援の形として三つのパターンを紹介しましたが、今後新しい支援の形が誕生する可能性も十分にあります。
今後DX支援に関する発表も増えてくると想定されるため、引き続きその動向を注視したいと思います。
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執筆者
- 外資系コンサルティングファームにて戦略、業務、ITプロジェクトと幅広く経験。現在はベンチャー企業のマネージャーをしながらフリーのコンサルタントとしても活動中。
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- 外資系コンサルティングファームにて戦略、業務、ITプロジェクトと幅広く経験。現在はベンチャー企業のマネージャーをしながらフリーのコンサルタントとしても活動中。
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