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なぜコンサルファームは上場しないのか?上場のメリット・デメリットを整理してみた

コンサルファームにおいては、上場することによる受ける恩恵がそこまで大きくない
前回、「上場しているコンサルファームの決算状況(2017年度版)」(https://www.consul.global/post1761/)という記事を公開しましたが、上場しているコンサルファームは限られ、外資系コンサルファームを中心に、上場していない企業が大半となります。今回は、コンサルファームがなぜ上場しないのかフォーカスしてみます。
■大手ファームの場合
PwC、KPMG、Deloitteといった外資大手は、監査法人グループであり、独立性の観点から上場できません。
■アクセンチュアの場合
監査法人を保有していないことから、上場に関する足かせは無く、現在ニューヨーク証券取引所に上場しています。
上記以外にも(戦略ファームが特にですが)、株式会社では無く合同会社にしており、日本市場は大きく見ていないというケースもあります。合同会社に関しては以下の記事でまとめています。
さて、外資ファームの事情は様々ですが、主に日系ファームが上場しないであろう理由を考察していきたいと思います(あくまで考察です)。
目次
上場のメリットを享受しない
上場した際の一般的なメリット例として、以下があります。
メリット1:資金調達・資金調達しやすい
メリット2:知名度・社会的信用度の向上(⇒ 営業力の強化・採用力の強化)
メリット3:ストックオプションによる既存社員の経営参画意識向上
それぞれをコンサルファームの視点で見てみます。
■メリット1:資金調達・資金調達しやすい
そもそもコンサルティングのビジネスモデルとして、元手を必要とせず、かつ大規模な設備投資や広告宣伝が顧客開拓につながるとは言いづらく、資金調達の必要性は低いと言えます。(むろん、上場前の株主からしたら、Exitで利益を得られるというのは大きいです。)
■メリット2:知名度・社会的信用度の向上(⇒ 営業力の強化・採用力の強化)
コンサルの性質上、B2Bの中でも主として経営幹部クラスに知れ渡っておればよく、知名度を万人にふりまけばいいというものでもありません。経営幹部にピンポイントにブランディングが出来ることが一番であり、上場でそれら経営幹部層に深く刺さるかというとそうではありません。むしろ日経やWBS(ワールドビジネスサテライト)に記事や広告を出稿し続けるほうが効果は大きいのではないでしょうか。
ただ近年、採用という視点では、総合系コンサルファームを筆頭としたファームの急激な拡大に伴い、新卒や未経験を大量採用する中で、認知度という面では重要となっており、街中広告に出稿する総合系コンサルファームやスポーツチームのスポンサーになっているファームも増えてきました。これもピンポイントなブランディングですね。
■メリット3:ストックオプションによる既存社員の経営参画意識向上
ストックオプションによるメリットは、IPOまでのマインド向上・継続性の担保の為、触媒的な経営手段として使われることも多く、それを一時的な手段に過ぎないと考えるコンサルファームの幹部陣は多いような気がします。
事業会社においては、上場することでヒト・モノ・カネが集まり易くなり事業拡大につながるという視点では、メリットが大きいのが一般的です。しかし、コンサルファームにおいては、これまでの話を通して上場によって受ける恩恵はそこまで大きくないと考えられます。
上場することによるデメリット
上述した、上場メリットが薄い以上に、上場デメリットが大きいのが、コンサルファームの特徴です。特に大きなデメリットについて解説します。
デメリット1:情報開示が必要となり、秘匿性が担保されない
デメリット2:業務統制の厳しさ(めんどくささ)
デメリット3:敵対的買収(敵対的TOB)対策 ※詳細割愛
■デメリット1:情報開示が必要となり、秘匿性が担保されない
コンサルファームは、非常に秘匿性の高い案件を数多く保持しており、プロジェクトの内容は勿論のこと、クライアントについても非公開を前提とした契約もあります。
上場することによる求められる情報開示にコンサルファームは向いていないと言うことができます。
■デメリット2:業務統制の厳しさ(めんどくささ)
内部統制をはじめとし、標準化等が各業務、会社全体に求められ、コンサル会社がこの統制下でどこまで自由にできるのかというのは皆懐疑的かもしれません。
最近では、国内系を筆頭に上場するコンサルファームも出てきておりますが、善し悪しが株主、経営陣、社員全ステークフォルダーにあるので判断が分かれるところですね。
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執筆者
- コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 コンサルティングカンパニー 営業部長
- 社長秘書として企業運営・企画に関する幅広な業務領域を経験後、営業に転身。現在は営業部長として、新規の顧客開拓や著名人とのリレーションシップ構築を実施している。JICAといった国際協力における海外常駐経験も保有し、常識にとらわれない提案力を持つ。
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執筆者
- コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社 コンサルティングカンパニー 営業部長
- 社長秘書として企業運営・企画に関する幅広な業務領域を経験後、営業に転身。現在は営業部長として、新規の顧客開拓や著名人とのリレーションシップ構築を実施している。JICAといった国際協力における海外常駐経験も保有し、常識にとらわれない提案力を持つ。