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複数ファームを経験して分かった、戦略コンサルと業務・ITコンサルの違い
時間軸・思考法・プレースタイルに見る、両者の違い
コンサルティングには様々な領域があり、領域ごとに異なる特徴があります。これまで複数のコンサルファームで勤務し、多様なプロジェクトに参画してきた筆者は、「業務コンサルとITコンサルには共通点があり、戦略コンサルは特筆して異なる点が多い」と言います。現場では、どんな思考・体制でプロジェクトを遂行しているのでしょうか。本記事では、経験して分かった戦略コンサルと業務・ITコンサルの違いをまとめました。
なお、どちらが優れている、どちらが劣っているということをお伝えするものではありませんし、クライアントの企業、業界、案件等によって、必ずしもお伝えする内容に当てはまるとは限りません。その点をご了承の上、一現役コンサルタントの知見としてお読みいただければと思います。
目次
戦略コンサルと業務・ITコンサルの違い
そもそも戦略コンサルと業務・ITコンサルとは何でしょうか?
当記事で表現する「戦略コンサル」は事業戦略や企画を検討するコンサルティングサービスを、「業務・ITコンサル」はシステムや業務の改善を検討するコンサルティングサービスを指しています。
それぞれのコンサルティングサービスには異なる特徴があります。そしてその結果として様々な点(コンサルティング内容からコンサルタントの性格まで)で差異が発生していると感じました。
それぞれの特徴を説明し、次に両者の差異点を解説していきます。
~コンサル内容に関するより詳しい解説は以下の記事をご参照ください~
▶戦略コンサルの解説はこちら
▶業務(IT)コンサルの解説はこちら
戦略コンサルと業務・ITコンサルのプロジェクトの特徴
まず戦略コンサルと業務・ITコンサルの特徴をそれぞれご説明します。
戦略 | 業務・IT | |
クライアントの依頼理由 | 新規事業等を企画しているが、検討の進め方が分からない、遂行できる人材がいない | 現状の業務やシステムに課題感がある、もしくは、工数削減などの余地がある |
クライアントの依頼内容 | テーマに対して検討を進め報告してほしい | 業務やシステムを実際に変えるところまでリード・サポートしてほしい |
プロジェクトの進め方 | ・プロジェクトマネージャーを中心とした複数人のコンサルタントが活動 ・クライアントとの接点は少なく、週に一回の討議のみ、などというのが一般的 | ・プロジェクトマネージャーの下に各チームのリーダーがおり、複数人のコンサルタントがリーダーの下で活動 ・戦略コンサルと比較してより多くの人数が関わる傾向にある ・クライアントとの接点は多く、毎日何かしら一緒に仕事をすることもある |
上記の特徴を踏まえ、あくまでも筆者の経験を通して実感したことではありますが、戦略コンサルと業務・ITコンサルの大きな違いは3つあります。
- 目を向ける時間軸の違い
- 問題解決へ向けた考え方の違い
- プレースタイルの違い
次章以降、それぞれ詳しく解説していきます。
違い① 目を向ける時間軸~未来にあるか、現在にあるか~
クライアントからの依頼事項や期待役割から、戦略コンサルと業務・ITコンサルが目を向ける時間軸の違いがあります。
戦略コンサルは、進むべき方向性を定めるために未来に目を向ける
前章でご紹介した通り、クライアントから戦略コンサルへの依頼事項は未来に関する進むべき方向性を定めるものが多く、フワッとししていています。戦略コンサルは最短でプロジェクトを進めていくために、答えを仮決めしてそれで良いのかを検証する「仮説思考」を用います。
もう少しわかりやすくお伝えするために、「AIを活用した新規事業を考える」というテーマのプロジェクトを題材にして以下説明します。
新規事業を考える際には (1)調査 (2)要件整理 (3)事業案作成、というステップを踏みます。
- AIを活用した事業にどのようなものがあるかの事例を調査し、
- そこから見えてくるAIを活用した新規事業の要件を整理し、
- 新規事業案を複数案作成する、というようなアプローチをとります。
その際に、最初に行う(1)の調査を一生懸命し続けても何も見えてきません。ある程度調査したところで、(2)のAIを活用した新規事業の要件の仮説を作って、(3)その仮説が当てはまりそうか検証する、あてはまりそうでない場合は(2)と(3)を繰り返す、というアプローチをとりながら新規事業を考えていきます。
業務・ITコンサルは、答え(のヒント)を探るために現在に焦点を当てる
一方、業務・ITコンサルは、今ここで起きている問題解決・課題対応を考える業務つまり“現在に目を向ける”業務のため、「現状把握」を重要視します。
わかりやすくお伝えするために、「業務効率化として業務工数削減を狙いとしたプロジェクト」を例に以下説明します。
業務工数を削減するためには、「現在どの業務でどれくらいの工数がかかっているのか、それはなぜか」が分からないと、「どの業務をどれくらい削減できるのか、削減したいのか」を議論することはできません。ゆえに、現状把握から目を背けるにはいかず、つぶさに現状調査が必要になります。
現状調査を実施する際には、業務プロセスの把握が鉄則です。業務プロセスの把握では現状業務フローを描き、不要業務の削除、必要業務の標準化、定型作業化、RPAなどシステム処理による自動化などの業務を定義していき、業務効率化後の業務フローを定義します。あわせて、現状の業務ボリュームの把握、業務工数削減幅を算定した上で、投資対効果を推定し新しい業務へむけた対応への投資判断・実施を行います。
以上の違いから、戦略コンサルが業務・ITコンサルティングを行う(またはその逆の)場合、戸惑いが生じることもあるでしょう。以下によくあるケースをご紹介します。
戦略コンサル経験者が業務・ITコンサルを初めて経験する時には、とにかくふわふわとした仮説を打ち出そうとして、「現状がわからないのにアイデアを出しても仕方がない。まずお客様から話をしっかり聞いて来い」とマネージャーからお叱りを受ける、ということになります。
一方、業務・ITコンサル経験者が戦略コンサルを初めて経験する際は、苦労するケースが多いかと思います。
とにかく現状をしっかり把握しようとするのですが、「仮説は何?」とマネージャーからお叱りを受けてしまうわけです。調査して現状は把握できても、仮説思考ができていないので、事実からメッセージを抽出する力が弱いよね、という指摘を受けがちです。
戦略コンサルと業務・ITコンサル、若手が活躍できるのはどっち?
業務・ITコンサルでは、現状把握が重要ということから若手がリーダーシップを取れるという付随的な良い効果もあります。
どういうことかというと、現場の担当者へのヒアリングを任されるのは時間に余裕がある若手(マネジメント層は別案件との掛け持ちで忙しかったりするので)になる傾向があり、ヒアリングの結果若手の方が現状業務に詳しくなることができます。
現状把握がプロジェクトのベースとなるので、結果として新卒2年目がプロジェクトリードしている、といったことが往々にして起こります。
業務・ITコンサルの方が若手の活躍しやすい環境である、と言えるのかもしれません。
執筆者
- 外資系コンサルティングファームにて戦略、業務、ITプロジェクトと幅広く経験。現在はベンチャー企業のマネージャーをしながらフリーのコンサルタントとしても活動中。
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