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プロジェクト管理のガイドライン PMBOK第7版の内容とは|先の見えない時代に即し、予測型から適応型アプローチへと大きく変更

プロジェクト管理のガイドライン PMBOK第7版の内容とは|先の見えない時代に即し、予測型から適応型アプローチへと大きく変更

不確実な時代に即した改定は、プリンシプル(原則)のような概念を含めたコンテンツに進化

2021年10月にPMBOK第7版がリリースされ、これまでの第6版から大きく変更がありました。概論については既に当メディアのニュースでご紹介をしておりますが、今回はPMBOK7とはなんなのか掘り下げていきます。

PMBOKとはそもそも何か

PMBOKは「Project Management Body of Knowledge」の略称で、通称は「ピンボック」と呼ばれています。プロジェクト管理に関する知識を体系的にまとめたガイドラインのようなものでプロジェクト管理の世界標準とされています。

PMBOKはプロジェクトの開発フェーズにおける参考書とみなされがちですが、プロジェクトを遂行し成果をあげる目的を同じくする意味でSEに限らずプロジェクトマネジメントに関わるすべての方が一読する価値があります。

PMBOKの初版は1996年にアメリカの非営利団体であるプロジェクトマネジメント協会(通称、PMI)により、プロジェクトマネジメントの普及拡大を目的に発行されました。時代変化に対応しながら2017年の第6版まで4年に1回のペースで改訂を繰り返し、2021年には最新版の第7版が発行され話題になりました。

第7版における「3つの変更点」と「考え方」

第6版と第7版を比較すると、構成もコンテンツの性質も大きく変わりました。第6版はプロジェクトマネジメントのプロセス管理に関するハウツーの要素が大きいのに対し、第7版ではプロジェクトの価値提供に重きを置いたバイブルのような内容になり、分量も大幅に減ったのが特徴です。

第6版(従来のバージョン)から第7版の変更点は以下の3点になります。

  • 第6版:ウォータフォール型のプロセス管理を目的とした成果物デリバリー
    →第7版:アジャイル型の価値提供を目的としたプリンシプルデリバリー(価値実現提供システムの提唱)
  • 第6版:業務の種類や性質によって分類された管理対象である「10の知識エリア」
    →第7版:プロジェクト管理手法とその重要度を解説する「8つのパフォーマンスドメイン」
  • 第6版:プロジェクト進行するうえで細分化された「5つのプロセス」
    →第7版:プロジェトを運営していくうえで必要な思考や行動の指針である「12の原理・原則」

第6版までは作業工程を明確に細分化し、上流から下流へとウォータフォールの形でプロジェクトを進める予測型アプローチでした。それに対して、第7版ではプロジェクト従事者が、自身を先の見えない変化する状況に適応させながら問題解決していく適応型アプローチに変更されています。

PMBOK第7版には「価値はプロジェクト成功の究極の指標である。」という記載がありますが、これは価値創造の為にプロジェクト管理者は何に注意を払い、何を軸としてプロジェクトを遂行すべきなのか、が最大のテーマということを指し示しています。このテーマに従って、第7版のプロジェクトアプローチはアジャイルに適したプリンシプルベースの思想に進化したと言えます。

次に、3つの変更点で注目すべき3つのキーワードについて詳しくみていきましょう。

「価値実現システム」

価値実現システムとは、組織を構築・維持・発展させることを目的とした戦略的な事業活動の集合と定義され、ポートフォリオ、プログラム、プロジェクト、プロダクト、定常業務などによって構成されています。

上記の要素からなる戦略ポートフォリオを策定し、それに基づいたプロジェクトの運用とその結果をもってポートフォリオやプロジェクトを高速に改善するというプロセスを繰り返すことで、組織として価値提供を目指す仕組みです。

「8つのパフォーマンスドメイン」

パフォーマンスドメインは、プロジェクト全体の目的・目標達成を成し遂げるために不可欠な領域を示したもので、パフォーマンスドメイン同士が相互に作用しあい、成果の達成に相乗効果をもたらすとされています。

PMBOK第7版では8つのパフォーマンスドメイン別に、プロジェクトフェーズごとの活動内容や考え方のフレームワーク、望ましい成果例とチェックリストが説明されています。

本書で列挙されている8つのパフォーマンスドメインは以下の通りです。

  • ステークホルダー:ステークホルダーに関連する活動や機能を取り扱い、効果的に実行することでプロジェクトを通じてステークホルダーと合意を形成し、生産的な関係を築ける。
  • チーム:ビジネス成果を実現するプロジェクトチームに関連する活動や機能を取り扱う。効果的な実行によって、オーナーシップの共有・チームパフォーマンスの向上が期待される。
  • 開発アプローチとライフサイクル:プロジェクト開発手法、ケイデンス(報告頻度)、プロジェクトライフサイクルに関連する活動や機能を取り扱う。プロジェクト成果物と一致する開発アプローチ、最適化されたプロジェクトサイクルの実現を可能にする。
  • 計画:プロジェクトを遂行する上で必要な要素(コストやスケジュール、その他全般)の計画に関連する活動と機能を取り扱う。組織化され、調整された計画はプロジェクト成果を高め、総合的なアプローチを可能にする。
  • プロジェクトワーク:プロセスの確立、リソースの管理、教育環境の構築などに関連する活動や機能を取り扱う。適切なプロセスを確立することで、プロジェクトチームが期待できる成果物が提供できるようになる。
  • デリバリー:プロジェクトが達成を目指したスコープと品質の提供に関する活動と機能を取り扱う。事業目標と戦略の推進に貢献するプロジェクトの成果物として、顧客のスコープの範囲や品質への期待を満たすことに重点を置く。
  • 測定:プロジェクトの作業パフォーマンスに対する評価や、必要に応じて行われるプロセス改善に関連する活動と機能を取り扱う。信頼性の高いデータに基づいてタイムリーな意思決定をすることで、目標を達成し、事業価値を創出する。
  • 不確実性:リスクや、プロジェクトを取り巻く不確実性に関連する活動と機能を取り扱う。不確かさの示す脅威と好機をプロジェクトチームが探求し、査定し、どのように対処するかでもたらされる効果が決まる。

「12のプリンシプル」

PMBOK第7版ではプロジェクトを遂行するうえで従事するメンバーの行動指針となる、戦略、意思決定、問題解決のための基礎的なガイドラインの項目を12の原理・原則(プリンシプル)として提示しています。

これは世界中の開発者に支持され、ソフトウェア開発の「マインドセット」でもあるアジャイルソフトウェア開発宣言で提唱されている4つの価値と12の原則の様式を採用したと言えます。

12のプリンシプルの定義は以下の通りです。

  • スチュワードシップ:倫理観を持ってプロジェクトに取組むこと。プロジェクトリーダーは、自ら責任を持って行動し、社内外のガイドラインを遵守しながら、誠実さ・配慮・信頼性を意識した活動を行うことが求められる。
  • チーム:協働的なプロジェクトチーム環境を構築すること。個人で作業するよりも効果的かつ効率的に共通の目的を達成するためにプロジェクトチームは、様々なスキル/知識/経験を持った人たちで構成される。
  • ステークホルダー:ステークホルダーと効果的に連携すること。プロジェクトの成功と顧客満足に貢献する為、プロジェクトリーダーは必要な範囲で積極的にステークホルダーを巻き込む姿勢が求められる。 
  • 価値:価値に集中すること。ビジネスの目的・利益・価値に対してプロジェクトの整合性を継続的に評価し、必要に応じて調整・改善する必要がある。 
  • システム思考:プロジェクトリーダーの役割としてプロジェクト内外で常に変化する状況を自発的に把握し、評価する姿勢が求められる。またプロジェクトに影響を及ぼすと判断される場合には、適切な対応を施さなければいけない。
  • リーダーシップ:リーダーシップを行動で発揮すること。個人とチームのニーズを達成する為、率先してリーダーシップを発揮し、プロジェクトを主導する事が求められる。
  • テーラリング:状況に応じて価値の最大化、コスト管理、スピードの向上を図る必要がある。求めている結果を実現するために必要十分な開発アプローチ、プロセスを検討する。 
  • 品質:プロセスと成果物に品質を組み込むこと、ステークホルダーの要求を満足させる成果物を作り、プロジェクトの目的を達成する。
  • 複雑さ:複雑さに適応すること、チームがプロジェクトライフサイクルを円滑に進められるような計画や方法を検討する必要がある。
  • リスク:リスク対応を最適化すること。プロジェクトに対する機会(プラスのリスク)と脅威(マイナスのリスク)を継続的に評価し、対応策を検討する必要がある。機会を最大限に享受し、脅威を最小限に留める方法を検討する。 
  • 適応性と回復力:組織やチームの適応性、回復力を継続的に評価し、必要に応じて強化を図る。変化する環境の中で発生し得るアクシデントや変化に柔軟に対応し、プロジェクトの作業を継続できるようにする事が目的。
  • チェンジ(変革):想定される未来の状態を達成するために変化できること。あるべき姿に向けて新技術や異なる考え方・プロセスを積極的に採用し、採用する上で障壁となるステークホルダーや前提・制約事項への対応策も合わせて検討する。

まとめ

PMBOKの初版は対象をプロジェクト管理とし、アプローチはウォータフォールを意識したものでした。しかし、時代の変遷とともにプログラムやポートフォリオなどの観点の多様化、それに伴う開発アプローチや開発手法、管理単位、業界自体が多様化したことで、管理対象はプロジェクトだけでなく、プログラム、PPT(プロダクトポートフォリオマネジメント)にまで拡大しました。

このような背景によって、従来の機械的な管理方法ではなく、アジャイルを取り込まざる得ない状況になり、第7版ではプリンシプル(原則)のような概念を含めたコンテンツに進化したと考えられます。

第7版への改訂は不確実性も含めているという観点で現代の開発状況に即した内容になっており、実務経験者としては過去の経験と照らし合わせて理解を深められるでしょう。その一方で、概念が抽象的になってしまい、PM初心者が実践するには難易度の高いものになったとも言えます。

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